電気主任技術者-電験3種の試験と実務 >> 力率改善のメリット
力率悪化の問題点
力率と有効電力と無効電力のページで、交流回路の独特の問題ともいえる、電圧と電流の周波数の時間的ずれ(位相差)について、理解していただけたと思います。では、この位相のずれが実際にどのように影響を及ぼすのかを説明したいと思います。
まずは、位相のずれ=力率の悪化=無効電力が増えるということは、理解していることと思いますが、この無効電力の増加は、見かけ上の電力が増加するということが言えます。極端な例で力率が0.1だとすると、1000Wのモーターを運転するのに必要な皮相電力は
VI=P/cosθ=10000VA
見かけ上は10000VAの電力が必要となります。そしてこの見かけ上という表現が曲者で、電力としての消費はしていないものの、これだけの電力を使える容量が必要となってきます。その容量とは、トランスや配線、配線用遮断器など、その系統で使われている電気機器全てに絡んできます。
使える容量を大ききすると、設備も大きくなりますし、金額もかさんできます。このように力率の悪化は、良いことがありません。
力率を改善する方法
力率が遅れる原因となるには、誘導リアクタンスを含む機器をたくさん運転させればさせるほど悪くなってきます。誘導リアクタンスは、色々な機器に含まれています。その力率悪化を改善するためには、容量リアクタンスである進相コンデンサを置き、電流が欲しいときにコンデンサに蓄積した電荷を補償し、進相コンデンサの進み力率で遅れ力率を打ち消す方法が取られています。
力率改善のメリット
先にも説明した通り力率の改善は、設備の容量を無駄なく使えるという事を理解できたと思いますが、更なるメリットとして上げられるのは、力率が良いほど電線に流れる電流が少なくなるため、送電線からの電力損失を抑えることができ、いくらかの省エネ効果が期待できます。
そして、最も魅力的なメリットとして、電力会社は基本料金に力率条件を組み込んでおり、力率 85 %を基準として料金が割り引き又は割増される仕組みになっています。つまり、力率を改善し100%で使用すれば、15% の割引が適用されることとなります。これは、力率が良いほど送電線に流れる電流が少なくなることと、電力会社の変圧器が有効利用が図れるという、メリットを考慮した優遇措置です。
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